読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

不断の努力と普段の努力

英語,研究,教育実践,読書記録,ヴィオラのこと。ヴィオラのような人を目指しています。

(教育実践)授業改善のツールとしてのルーブリック

教育実践

ルーブリックについては,

www.justsystems.com

関西大学の黒上先生の解説が実践者にはわかりやすいかと思います。

概要

 2年連続で同じ科目を担当して,去年度の反省を踏まえた上で行った実践報告です。行ったこととしては,パフォーマンス課題の中でルーブリックを導入した,それだけのことです。実は恥ずかしながら,2015年度の時点ではルーブリックのことは知っていたのですが,その実用性には気づけていませんでした。ですが,ルーブリックを導入してみると,生徒にとっても,教員にとってもポジティブに働くことがわかりました。

背景

 高校1年を対象としたコミュニケーション英語Iのうち,4単位ある中の1単位をALTとのTTに当てており,その中でパフォーマンス課題に取り組んでもらいました。パフォーマンス課題としては,ALTへのインタビューやディベート(アカデミック)といったものです。その中で例としてディベートを取り上げます。昨年度,特に課題だなと思ったのがこのディベートで,2ヶ月ほど費やして準備をしたのですが,生徒は頑張っていたものの,その時間に見合ったプロダクトを出すことができませんでした*1。そこで,まず原因を考えてみました。

  • 反駁の練習が十分にできていなかった。
  • 発言者の声が不明瞭で何を言っているのか理解できないケースがあった。
  • (アカデミックなのに)十分な準備をできていないチームがあった。
  • チームで行うものなのに,一部協力できていないチームがあった。
  • 結局本番のディベートは1回しかできていなかった。

などなど。

改善のために

 ディベートは言語活動の中でも非常に高度なものなので,学期の最後の方で行うのが良いかなと思うのですが,こうした反省を踏まえて,昨年度はついていくだけだったのですが,今年度当初に私が主となって,バックワードデザイン(もどき)で高度な言語活動に向かうための準備をするためにどのようなことをするべきかを考えました。

  • ペアでの英語チャットの時間を充実させる。(ウォームアップ)
  • パフォーマンス課題の中に質疑応答を組み込む。
  • それを繰り返し,体験させる。
  • ルーブリックを作り,生徒に事前提示することでゴールを明確にする。

 最初は,個人レベルから始め,Show & Tellのような活動,徐々にチームワークの必要なパフォーマンス課題を用意するようにしました。また,ディベートについては,2回実施し,慣れを作るよう努めました。ちなみに,なぜルーブリックを事前提示するのかといえば,それが学習者が目標を理解して学習に向かうことにつながりそれが,パフォーマンスの向上,ひいては内的動機づけを高める可能性があるからです (鈴木, 2011) *2

成果(?)

 生徒の声はアンケートや質問紙で詳細にとったわけではありませんが,評価基準の中に数字を混ぜる(何文以上,何分以上)ことで,生徒も明確に目標を持って準備をすることができたかと思います。実際に聞いてみると,基準が書いてあるので,計画的に取り組むことができたという声がありました。評価に関してもルーブリックがあると,納得してもらうことができたみたいです。本当は,プレとポストでスピーキングの熟達度が上がったなど,テストをしても良いのでしょうけど,今回はそういう実験ではないので。。。

 実際のものはお見せできませんが,ルーブリックを作ることで教員間の共通認識を確認することができました。例えば,パフォーマンスに向かう際にはきちんと暗記して臨ませるとか,そういうごくごく単純なことですが,実はえっそうなの?みたいなことが以前あったもので...こういうのはきちんと提示し,教員間で評価「基」準は明確にしておくと後々評価の信頼性を高めることにもつながると思いました。また,評価「規」準の数も大事で,基本は3つに絞りました。でないと付ける方も大変ですからね(例えば,内容・表現方法・チームワークといった規準でつけました。)。

 

課題

 ルーブリックは,「基」準を作るのが難しいです。実際やってみると,こちらが用意した基準を易々と超える生徒たち(喜ばしいことですが),逆に全然届かない生徒たちがいたりして,実態に即して改善の余地がありそうです。また,教員間でのミーティングが不可欠ですが,それが上手く確保できずコミュニケーションが取れない場合がありました。特にALTは常勤ではなかったので,その辺りは苦労しました。ですので,自分たちが今年度作ったものをうまく来年度に引き継いでブラッシュアップしていただければなと思います(自分が来年度も担当する可能性もありますが)。

 

お読みいただきまして,ありがとうございました。

*1:補足すると,展開授業で2週に1回がTTの授業なので,TTの回数自体そもそも少ないのです。

*2:鈴木雅之 (2011) ルーブリックの提示による評価基準・評価目的の教示が学習者に及ぼす影響 ー テスト観・動機づけ・学習方略に着目してー 教育心理学研究, 59, 131-143.

(読書記録)高校生は中学英語を使いこなせるか? 金谷(編)(2017)

読書記録

金谷憲(編)(2017)『高校生は中学英語を使いこなせるか?』アルク

総計5,000人ほどを対象とした調査で,速読,リスニング,ディクテーション,和文英訳,Picture descriptionを用いて,中学の英文法の知識が「定着」しているかをまとめています。

結果は察しがつくかと思いますが,定着しているとはとても言えない状況です(それも熟達度や学年にあまり依らず)。殊にまとまりのある文章まで作るところまでは全然至っていない,と。

一例ですが,面白かったものとして和文英訳の誤答分析を挙げてみます。スペルミスや冠詞のエラーは多分に漏れずですが,

英作で誤りの多い構文の例として

1. 後置修飾を含む名詞句が主語の文

2. 必要以上に複雑な構造を使用する

3. 「〜がある」におけるThere be構文の乱用

というのが紹介されていました。(pp. 99-103)

経験的にこういうことは分かってくるのかと思いますが,私のような経験の浅い先生だとなかなか気づかない部分もあり,生徒がどういうところでつまずく可能性があるのかを知る上で示唆に富んだ面白い本でした。

プラスαあれば面白いな,自分でやってみたいなと思ったのは,測定された技能がリーディング・リスニング・ライティングでスピーキングがなされていないので,それをやってみるといあことです。Picture descriptionはよくスピーキングでも使われている題材ですし,外部試験でも使われています。ただ,分析が煩雑になるでしょうが…

実際に調査で使われた文も載っていますので,生徒さんに力試しとしてトライさせてみても良いかもしれません。

(読書記録)読んでいない本について堂々と語る方法 (バイヤール, 2016)

読書記録

 タイトルで心惹かれた本,読んでみました。

読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)

読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)

 

 読んでいないといっても,それには色々あるよという話が最初に提示されています。読んでいないといっても,何かしらの形で触れているという体で話は進んでいきます。その中で以下の4つの分類に分けて論が展開されます。*1

  1. ぜんぜん読んだことのない本
  2. ざっと読んだ(流し読みをした)ことがある本
  3. 人から聞いたことがある本
  4. 読んだことはあるが忘れてしまった本

 個別の話は,良いとして,大事なのは,「深入り」しないこと。筆者も読んだことがあるというのは逆にどういう状態か,逡巡しています。*2別に深く読んだところで,多くの人は知らないのだから,堂々としていれば良い。語るのにそれだけ知っている必要性もないし,そう深入りする必要性がある場面があるとしたら,何か公に「書く」ものくらいなのではないでしょうか。

 面白かったポイントを2点。一つ目はそんなに真剣に読まなくたって,話すことくらいは気概で乗り切れるんだよ。と大事なポイントを「変奏」しながら,繰り返し述べているところ。気後れせず,自分の考えを押し付け,でっち上げながら,自分のことを語る。自分も今まさにそれを体現しています。もう一つはまた教養がある人は,本を読まないというところ。なぜなら,「深入り」してじっくり読んでいたんじゃ触れられない本は数多出てくる。むしろ読まない方が数に触れられるから知識の幅が広がるという考えのようです。そうか,とりあえずで良いから触れるということが大切なんだなぁと感じた次第です。

 自分の日常に置き換えても,論文を読む際に,きちんと全部読んでいるものなんてものはほとんどない。心理学が中心なので,統計云々はほぼ読み飛ばしている。要点さえつかめていれば,読む必要がない箇所だらけなんだよなとこの本を「読みながら」考えていました。ということで,この本は「読みました」が,この本の教えに沿って,「深入り」もせずそんな大それたことは申しておりません。ただ,自分の思索にふけ本について表現することが肝要だと読み取りましたので、自由に思ったことを書いてみました。

こうしてみると,読んでもいない本の世界が広がっていきますね。

本の見方が変わるかもという意味でオススメします。

*1:実際,この本では本を読んでいないことと,読書に無縁であるということとは別物として扱われています。後者が,読むという行為を行なっていないわけです。

*2:こうしてみると逆に読んだ本というのはどんな本なのでしょう?本の内容に即してきちんと自分のことばで語ることができれば,それでいい?どうやって判断する?