不断の努力と普段の努力

英語,研究,教育実践,読書記録,ヴィオラのこと。ヴィオラのような人を目指しています。

(学会記録)(雑感)英語で発表するということ

 今回は奈良教育大学英語教育研究会(@奈良教育大学)2018年2月の会に参加。初めての参加ですが,事務局長の先生からお誘いいただいたこの会,大いに楽しむことができました。感謝申し上げます。

 普段は,それぞれの校種からの研究発表や実践発表,ワークショップと多彩にされているとのことでしたが,今回は卒論・修論発表からスタートということで,先週に引き続き,学生さんの発表を最初,楽しむことができました。トピックはGestureとWTC(Willingness to communicate)ということで,たまたま先週と同じようなトピックというのも,私にとっては取っつきやすかったです。WTCの話はもう少し研究方法(測定方法や処遇など)を精査する必要があると感じましたが...心的なものって測定がそもそも難しいので,色々思うところがありました。

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 発表自体は,Thomas Amundrud先生(奈良教育大学)のワークショップ"How to increase teacher L2 talk with effective nonverbal communication"が特に面白かったです。はじめに教室環境で"Space speaks"という話をされていて,つまりは学習者との距離感や授業中の教員の立ち位置が大切だよねという話をされていて,普通に教壇に立って授業をしていることは当たり前すぎて,疑問に思わなかったところもあり,興味深い視座だと感じました。また,その後のワークショップでは,具体的にgestureを使ったテクストへの理解の一方略を学びました。実際にテクストを読み上げるときにgestureをつけて理解してもらう。この時読み方も大切だなと思いました。最近,青谷優子さんの英語朗読の本が面白かったので,授業でも感情を込めて伝えようとしていますが,それと併用すると,読むことも一層楽しくなるかもしれないですし,実際にそういったパフォーマンスとしての朗読を学習者がしても面白いのではないかという可能性を感じました。

英語は朗読でうまくなる!

英語は朗読でうまくなる!

 

  ところで,このミーティングは英語で発表することを前提ということを伺いました。ということで,発表もフロアとのディスカッションも全て英語。なかなか刺激的なミーティングでした。それぞれの先生方がわかりやすくインタラクションを交えて話しておられたので,こちらとしても大いに楽しむことができました。ただ,その後の懇親会で,主催者側の佐藤臨太郎先生とお話しましたが,英語でやるとなっただけで聴衆が減ってしまうということ聞いて,そうなのかと思いました。また,ゼミも英語で行われるのでそれを敬遠する学生さんもいるとのこと,それは勿体ないと思いました。今まで考えが及んだことがなかったのですが,英語で発表すれば,少なくとも英語教育の文脈の中では,聴衆の対象が英語ネイティブにも拡大されるはずなのに,聴衆が減ってしまうという現象は興味深く感じられました。

 話は逸れますが,高等学校の学習指導要領では,英語の授業は「英語」でというのが基本で,新学習指導要領では中学でもそれが適用されることとなります。しかしながら,実態は英語の授業であっても,ほとんどが日本語,学習者も英語を発することがないという授業に遭遇することもあります。特にベテランになるとその傾向は強いと思います。決して,英語で授業することができないわけではないはずなのですが...。また,そういう先生方の中では,昨今の「4技能」に関する議論も実は届いてなかったりするのでは?と思うこともあります。統計的なものがありませんので,推測の域を出ませんが...。そしてそういう先生方こそ見ていただきたいものなのに,研究みたいなものには興味がなかったりするという...。やはり,伝承したり,お誘いするしかないのかなという現実に苛まれたりするのですよね。そんなことを懇親会でも話をしました。なかなか難しいです。

 私自身は今回のミーティングに大いに刺激を受けたので,いずれは発表できたら良いなと思いましたが,発表ネタがありません。。。どなたか共同研究など。。。ありませんでしょうか。。。

(学会記録)(雑感) Feasibleでsustainableな英語教育を目指して

 本日は,第21回KELES(関西英語教育学会)の卒論・修論研究発表セミナーに参加しました。大学の後輩や知り合いの先生のご発表を拝聴し,意見交換を行う時間は私にとっても刺激的な時間でした。的外れな質問も多くしてしまい反省でしたが,どれも面白い発表ばかりで思わず質問してしたくなってしまったというのが正直なところです。関係者の方々,ありがとうございました。

 さて,今回のセミナーでは,スペシャトークとして八島智子先生 (関西大学)のご講演があったのですが,それで考えさせられることがあったので,備忘録までにまとめてみようと思いました。ご講演のタイトルは「外国語情意研究の視座 WTC, L2 Self, Community」で,内容としては大きく3点

  1. なぜWTCを研究をするのか?
    → コミュニケーション(対話)に開いた英語教育をめざす
  2. 情意研究を5つの鍵概念(国際的指向性・Ideal L2 self・Identity・Imagined community・Dynamics of motivation)から見る
  3. 鍵概念(理論)・研究・実践の統合

でした。理論に関するところは,この研究の第一人者なので,理路整然とされていて,勉強になるところしかなかったのですが,3の実践の統合の話で「?」となるところがありました。

 それは,教育実践の例として「模擬国連」というものが使われていたこと。実践としては,確かに素晴らしいもので,それを通して動機づけの部分が伸びていることが,グラフからも読み取ることができました。参加者の声を見ても,それがありありと伝わってきて,良いものでした。ただ,ここで湧いてきたのは,それだけで良いのだろうか?ということです。このMotivation研究は学習者中心で,それに関わる教員の視点が語られることがありませんでした。その視点も欲しかったなぁというのが正直な感想です。

 「模擬国連」というプロジェクト自体は立派で,できたらすごいなぁと思う部分はあるのですが,そこに関わる教員のことを考えると,きっと先生方は大変な思いをして取り組まれてきたのではないかなと思われます。お話を聞いていると,このプロジェクトについては,懸命な教員の足場がけ(scaffolding)が行われ,また教師が全行程を引っ張っていくということが(私の聞き取りミスでなければ)言われていたかと思います。私はそんな話を聞いて学習者もそうですが,それに携われた先生方に心から拍手を送りたいなと思いました。

 こういうscaffoldingで教員が頑張らなければならなくなる場面というのは,研究レベルではないのですが,聞くことがあります。*1 Motivation研究の中で, A vivid, elaborate and feasible ideal self is motivationally effective. (Dörnyei, 2009, p. 29) という引用が紹介されていたのですが,これは教員にとっても当てはまると思います。また,contextを見ることが大切と,八島先生はおっしゃっていましたが,私は,今回のご講演をみて,こういう「模擬国連」のような大掛かりなプロジェクト,すごくやってみたいと思う気持ちを持つのですが,現在のcontextを鑑みると,例えば現場の多忙化や同僚性の問題から,やりたくてもできない(feasibilityの問題)というモヤモヤが生じてしまうのです。さらに「生徒のため」という言葉は昨今の部活問題にも通づるものがありますが,危険思想だなと感じますし,それよりも,派手さはなくても,feasibleでsustainableな英語教育を目指したいなと思うのです。お恥ずかしい話かもしれませんが。

 話はやや脱線しますが,そのご講演の前にfeasibleでsustainableだなと感じさせる興味深い発表がありました。それは中学と高校で教科書を中心とした指導だけで学習者の力が伸び,また情意面でもポジティブな影響を及ぼしたという,滋賀県の先生のご発表です。*2 その先生の発表では,単語帳を使わず,無駄な参考書を持たせず,無駄な予習を排し,徹底して教科書を4技能をフル活用させながら,力をつけさせるというもの。その中に内容理解だけではなく,推論発問を取り入れたり,音読筆写やディクテーションを入れているというものでした。この発表を聞いて,質問するときに語彙のなさから「すごい」という言葉を連発してしまったのですが,本当に地に足のついた素晴らしいご実践だと思いました。また,このやり方は教員にとっても負担がさほど大きくなく,エコだというようにもおっしゃっていました。そう,こういうところを目指したいものですね。学習者も教員もwin-winな関係。

 閑話休題。やや批判的な論調になってしまいましたが,決して八島先生のお考えがよろしくないということを言っているのではなく,学習者だけでなく,教員の存在も学習者の動機づけのagentとしては間違いなく関与しているので,そういったところも自分自身調べられたら面白いんじゃないかなと思ったまでです。余談ですが,この記事を書こうと思ったきっかけは「研究を読んだ時にダイアログ(反論したいという想い)が起こる」ということを八島先生がおっしゃっていたことに起因するものです。それを具現化してみようということでこんな記事を書いてみたまでです。

*1:例えば,ディベート(アカデミック)で,さほど学力の高くない学習者に対して,なんとか議論が成立するように,教員がかなりscaffoldingでテコ入れをするという話を聞くと,こういう活動の意味とはなんなんだろうなと思うことがあります(それは上がやれ!と言っているからやっているだけなのでしょうけども) これはとある高校の先生から聞いた話です。

*2:個人的な知り合いでもあり,名前を出してもよかったのですが,許可をいただいていないのであくまで匿名で

(レビュー) 独断と偏見で選ぶ今年の教育本 2017 10冊

2017年に読んだ本で,これはという本10冊+1冊を紹介します。完全に独断と偏見ですが,どれも間違いなくおすすめの本です。

選んだ基準としては

  • 比較的最近のもの
  • あまり専門的すぎないもの
  • 現場の先生を意識したもの

難易度的なサジ加減がわからないのですが,とりあえず興奮しながら読んだものを挙げてみます。できるだけコンパクトにまとめます。

 

またすでに,岩瀬先生や

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亘理先生

[本013] 独断と偏見による、これからの教育を考える20冊。 | 静岡大学 教育学部 英語教育講座 亘理研究室

が素晴らしい本を紹介なさっているので,そこに被らないようにも敢えてしています。

 

● 次期学習指導要領に向けて

「資質・能力」と学びのメカニズム

「資質・能力」と学びのメカニズム

 

新学習指導要領のポイントなる用語(e.g.「主体的・対話的で深い学び」)を巷で言われているような誤解を踏まえつつ,解説した本。特に理論的な背景が今回の指導要領では色濃いですが,そうした背景を踏まえ,実践に落とし込むには?という,理論と実践の架け橋となる本で,今後の指導のあり方について考えさせられる良書です。

 

● 日々の実践に活かす(初級編) 

まんがで知る教師の学び これからの学校教育を担うために

まんがで知る教師の学び これからの学校教育を担うために

 

 

まんがで知る教師の学び2――アクティブ・ラーニングとは何か

まんがで知る教師の学び2――アクティブ・ラーニングとは何か

 

教師論というところで,これだけ分かりやすい本はないです。断言します。現場を舞台としているので,展開に若干の無理はありますが,イメージがしやすい作りになっています。このあたりは現場の先生が書かれているだけのことはあります。今日的教育のキーワードだけでなく,教師としてあり方に関するヒントも,豊富な文献と共に書かれています。

● 日々の実践に活かす(中級編)

授業の見方―「主体的・対話的で深い学び」の授業改善

授業の見方―「主体的・対話的で深い学び」の授業改善

 

 授業の作り方,改善の方法についての記述が素晴らしい。授業はコケてなんぼの世界。失敗を恐れる先生にこそ,ぜひ読んでいただきたい一冊。ポイントは多々あるのですが,特に

・授業を見るときに
①「後ろ」から教師の手立てを見る
②「横」から教師と子供のやりとりを見る
③「前」から子供の反応を見る

という考えは大変参考になりました。研究授業で他の先生の授業を見るときに実践してみると,授業が違って見えてきて,なるほどと思いました。 

理想の授業づくり

理想の授業づくり

 

自分の好きなものを追いかけるーたまたま今年上條先生とお話する機会があったのですが,好きなものをトコトン追い求めておられる姿を見て,元気をもらったものです。さて,ここで言う理想の授業づくりとは...

理想の授業づくりでは
(a)「好きなこと=繰り返し行う言語活動」を発掘する
(b)「学びのしかけ=学びを促進するルール」を発見する
(c)「創造的な調整=授業への落とし込み」を協創する (p. 32)

 こと。その中で理想の授業を追い求めることで得られる6つの可能性「教師のこだわりを鍛える」「教師の「見る」を拡張する」「「学びのしかけ」を創り出す」「カリキュラムの再考を促す」「斬新な教材開発につながる」「学校文化の弊害と闘える」について述べられています。本当に具現できれば理想的なのですが,どれも刺激的な内容です。 

余談ですが更に実践知を深めてみたいと思われる方には上級編もあります。*1

 ● 指導の構造の在り方を考える 

「学びの責任」は誰にあるのか: 「責任の移行モデル」で授業が変わる

「学びの責任」は誰にあるのか: 「責任の移行モデル」で授業が変わる

 

 学びの責任は教師にありますか?生徒にありますか?その在り方について考えさせられる一冊。

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「学びの責任移行モデル」(p. 9)

教師が責任を背負い込むのではなく,次第に学習者に学びの責任を譲渡していく発想。大変共感できたのと同時に,これまでの教育(全てではないと思いますが)が,主として,教師中心で学びの責任を背負ってきたんだということに思いを馳せます。

●「問われる」から「問う」側へ

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

 

学習者たちは,問われることには慣れているが,問うことには慣れてはいません。当たり前のことになってしまっているような気がします。ですが,問うことに慣れていないと,会話が成立しなくなることがある。実際に海外研修で生徒たちを引率された先生が,質問が出来ない...そんなことをおっしゃっていたことを思い出しました。授業の中で問いを考えさせるだけで,主体的に自分から情報を一生懸命得ようとしますし,学びの形態も個・ペア・グループといろんな形態に持っていきやすいと実践しながら感じています。

●自律した学習者へ

学生を自己調整学習者に育てる:アクティブラー二ングのその先へ

学生を自己調整学習者に育てる:アクティブラー二ングのその先へ

  • 作者: L.B.ニルソン,Linda B. Nilson,美馬のゆり,伊藤崇達,深谷達史,岡田涼,梅本貴豊,渡辺雄貴,市川尚,畑野快
  • 出版社/メーカー: 北大路書房
  • 発売日: 2017/07/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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最終的に教師のガイドがなくても,学び続けることができるアクティブ・ラーナーを育てることは目標として掲げられるべきことのように思います。そのために,自己調整という言葉がキーワードとなってきます。そういった自己調整を具体化するために必要な要素として,本文には

・方略に関する知識(e.g. リハーサル,精緻化,体制化)
・認知的な課題に関する知識(e.g. 指示を理解したり,課題の難易度を判断したり,いつ・どの学習方略ないしは思考方略を活用するかを決める)
・自分自身に関する知識(e.g. 学習者としての強みと弱みを知ること,課題の指示を正確に判断すること,与えられた課題を達成するために自分にとってベストな方略を知ること) (p. 3)

といったことが書かれています。換言すると,授業の中では,知識だけではなく,方略指導や内省を深めるプロセスも必要であるということです。特に振り返りに関する記述がこの本は素晴らしく,事例も豊富に紹介されている良書です。

●成長し続ける教師を目指して

問い続ける教師―教育の哲学×教師の哲学

問い続ける教師―教育の哲学×教師の哲学

 

「子どもたちをアクティブ・ラーナーに育てる」という言葉を最近はよく耳にしますが,子どもたちの主体的,対話的な深い学びを具現しようとするならば,教師自身がまずアクティブ・ラーナーであるべきではないでしょうか。(p. 3)

教師は「自己の崇高な使命を深く自覚し,絶えず研究と修養に励み,その職責の遂行に努めなければならない」(教育基本法 第9条) わけですが,学び続けることの意義を考えさせられる本です。小学校の経験を元に多賀先生は実践を記述されていますが,クラスの規律・授業実践は高校教員の私でも間違いなく得られるものばかりでした。そこに,空気を壊さない程度に苫野先生の哲学による合いの手が入るのが良いですね。また,自分の原点というのは何か?というのもこの本は大きなテーマになっており,そういった足跡を振り返るきっかけとしても良い本だと思います。

教師の哲学などは,安易に持つべきものでもありません。幅広い学びと,深い思索に基づいた時にはじめて「教師の哲学」と言えるものになるのだと思うのです。(p. 32)

●若手の成長を考える

教師の学びを科学する: データから見える若手の育成と熟達のモデル

教師の学びを科学する: データから見える若手の育成と熟達のモデル

 

 若手の教員の成長について触れられている優れた本。理論に関する記述もさることながら,量的な分析により,教師効力感についての詳細な報告がなされています。

まとめとしては

  •  経験モデルの実証研究 量的研究では存在していない(らしい)
  • 学びを循環させていくことが大切 ・ PDCAサイクル(やALACTモデル)のようなもの(p. 55)
  • 教師効力感(授業)に関しては,内省的観察の影響が大きく,内省がデータからも重要であるということが裏付けられた(p. 55)→ 自分をメタ的に見るという姿勢が肝要
  • 子ども支援の経験があることがその後の教師効力感にポジティブな影響を与える (p. 72)
  • 異動経験が教師効力感(負の転移)・バーンアウト(負の転移)に大きく影響する(p. 105)

初任校や二校目など,経験によって本書の見え方も違うかなと思います。それがまた面白いような気がします。

 ●まだまだ修行が足りません

ということで,ざっくりとまとめてみましたが,他にも読んだが,理解が及んでいないもの,積ん読状態になっているもの,多数あります(本当に多数)。ぜひ,皆さんのおすすめ教育本も紹介していただき,私も勉強させていただければと思います。

2018年も学びが深まっていきますように。

 

*1:かなりマニアックになりますので,参考までに。

 ● 日々の実践に活かす(上級編)

教師教育学:理論と実践をつなぐリアリスティック・アプローチ

教師教育学:理論と実践をつなぐリアリスティック・アプローチ

 

教師教育において,コルトハーヘン先生はこの手の大家であることを恥ずかしながら今年学びました。最新のものでこういった論文もありますが,教師教育に興味のある方はぜひこちらをご覧になってみてはいかがでしょうか。

[pdf] Korthagen, F. (2017). Inconvenient truths about teacher learning: towards professional development 3.0. Teachers and Teaching, 23, 387-405. doi:10.1080/13540602.2016.1211523
http://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.1080/13540602.2016.1211523

Theory - Practice - Personという構造が何とも美しいです。