不断の努力と普段の努力

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(論文レビュー) L2語彙指導における頻度と語彙サイズの再評価

Schmitt, N., & Schmitt, D. (2014). A reassessment of frequency and vocabulary size in L2 vocabulary teaching. Language Teaching, 47, 484-503. doi:10.1017/S0261444812000018

の簡単なまとめです。

 第一著者のサイトから,論文はadvanced view版ですが,ダウンロードが可能です。(pdf注意)

http://www.norbertschmitt.co.uk/uploads/schmitt-n-and-schmitt-d-(available-in-advanced-view)-a-reassessment-of-frequency-and-vocabulary-size-in-l2-vocabulary-teaching-language-teaching.pdf

アブストラクト

 従来,2,000語レベルが高頻度語で,10,000+語レベルが低頻度語であると考えられていたものを頻度,習得研究,英語使用,多読教材,辞書から,再評価しましたという論文。分析の結果,3,000語までが高頻度語であり,9,000+語レベルが低頻度語だと考え,またその間(3,000-9,000語レベル)を中頻度(mid-frequent)語としようとすることをこの論文では提案しています。

高頻度語

 そもそも2,000語レベルを高頻度語としようとしたことは,英語語彙の有名なリストであり,重要な語を抽出しているGeneral Service List (GSL)からきていると指摘されています*1。それをいくつかの観点で分析しています。例えば,頻度に関してはコーパスによる分析(Nation, 2006), 語彙習得は反復によって習得が促されることから,ある程度語がテキスト中に登場すれば,それを高頻度と見なすということで,分析しています。

 その中で個人的には理解度の観点から見ているところが教育っぽくて良いなと思いました。語彙習得の世界で,理解のためには話全体の95-98%の語を知っている必要があります。この95-98%はそのテキスト中の語彙を知っていないと十分な理解に至らないとする研究(e.g., Hu & Nation, 2000; Laufer & Ravenhorst-Kalovsky, 2010; Schmitt, Jiang & Grabe, 2011)を基に,最低ラインである95%をクリアするためにどれだけの語彙が必要かを過去の習得研究を見ています。その結果,リーディング(書き言葉)の場合,多読教材であれば,3,000語レベルの知識があれば十分なのですが,普通に書物を読む上では不十分であることが分かりました。しかしながらリスニング(話し言葉)の場合,95%を満たすのに,2,000語では少ないが3,000語あれば十分であることが分かったため,この3,000語を高頻度語として見なしています。

低頻度語

 低頻度語は,頻度の観点*2からではなく,理解度の観点から話全体の98%の語が分かるレベルを見ています。その結果,Nation (2006)から8,000-9,000語が妥当であるとしており,従来の10,000語+よりも9,000語+の方がふさわしいとしています。

中頻度語

 今ままでは,高頻度語・低頻度語ばかりに注目が集まってきたために,この用語はこの論文で初めて提示されているのですが,高頻度語,低頻度語と並んでこの中間にある語も教育上大事であるということを示すためにこの中頻度語というものが取り上げられています。

 実際,内容を理解するために,当たり前の話ですが中頻度語が必要になります。実際に,前述のように3,000語レベルでは普通に難なく読むことは不可能です。実際には6,000語レベルから8,000語レベルは最低必要であると考えられています。

 ここで興味深い研究が取り上げられています。Laufer and Ravenhorst-Kalovsky (2010)では,大学生の語彙サイズに関する研究を行ったのですが,3,000語レベルの語彙しかない学習者(つまり本論文で提示された高頻度語を習得しているレベル)は,大学の中で読みに困難を抱えているということが示されています。すなわち高頻度語だけでは不十分であることが報告されています。また別観点ですが,中頻度語を学習することは,高頻度や中頻度語のアクセスも早まる,つまり読みが速くなるということからも学習において重要であることが主張されています(McMillion & Shaw, 2008)。

 しかし,実際のところ中頻度語を教育上どう取り扱うかは今のところ提示されていません。ですが,実際に英語のテキストを見てみると中頻度語が含まれていることは間違いないので,指導を避けることはできませんよね。さてそのあたりも取り組まれねばならないですよね。という感じで締めくくられています。

 

 ということで感想。

 実際,教育の役割とすれば,高頻度語をしっかり教えること,ストラテジーを教えることが肝要でそれ以上のことは余計にする必要もないような。日本の英語教育では,とかくそのあたりの中頻度語に関係ありそうなものは,「単語帳を買って,あとはひたすら自分で覚えましょう!以上!」で終わってしまう気がするのですが,はてどうすればいいんでしょうね。勿論,マテリアルを与えてそういった語にも触れさせるようにはしたいですが。その語彙に何回も出会えるよう素材を選ぶのって難しいでしょうという話になりそうで(投げやり)。

*1:このリストは今では使われない語も含まれているため,2013年にA New General Service Listが提案されています

A New General Service List (1.01)

*2:頻度で見ると,例えば,9,000語レベルの語と10,000語レベルの語の頻度はさほど差がないからです。