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(論文レビュー) Don't just “repeat after me” ― 検索練習は語彙学習において模倣よりも良い (Kang et al., 2013)

Kang, S. H. K., Gollau, T. H., & Pashler, H. (2013). Don't just repeat after me: Retrieval practice is better than imitation for foreign vocabulary learning. Psychonomic Bulletin & Review, 20, 1259-1265. doi:10.3758/s13423-013-0450-z

の簡単なまとめです。

概要

 検索練習(retrieval practice)とは簡単に言うと,目標となる情報を思い出し,それを産出する行為のことです。その検索練習の有用性を示したのが本論文の要旨となります。

 実験では検索練習(絵を見て対応する語を発する)群模倣する(絵を見て発音を聞き繰り返す)群で比較がなされました。目標語(ヘブライ語)は40語で体・食べ物・動物・家具の4種類から選ばれています。学習者はヘブライ語の知識がない英語母語話者で,個別に学習を行いました。

 実験は2つ行われており,実験1では学習直後にテストが行われ,実験2では学習から2日後に行われています。テストは2種類,理解(発音を聞いて正しい絵を選ぶ)テストと産出(絵を見て正しい語を発音する)テストでした。学習方法は実験1では3回,実験2では6回同じ学習を行っています。

 結果,実験1, 2双方において,理解・産出いずれにおいても検索練習の方が,模倣よりも記憶として定着したことが示されています*1。また同時に発音の正確性をヘブライ語話者に10段階で評価してもらっていますが,双方において差は見られませんでした。つまり検索練習をさせたからといって発音への影響はないということです。

 以上より検索練習は模倣よりも効果的であると言えるというわけです。

感想

 今回は絵を使って学習をしていることもあり,抽象語(例えば感情を表す語とか)には使えないという難点はありますが,具象語にこの方略は有効ではないでしょうか。また語以外でも例えば,文法学習において例文を理解してもらいたい時にも場合によっては使えるでしょう(例えば,分詞とか)。

 問題点を挙げると,検索練習は時間がかかるという点があります。この実験は個別で行われていたこともあり,統制もうまく行ったものと思われます。しかし教育現場の視点から一斉授業になると個人差の問題を無視できません。よってある程度模倣で慣らした上で検索練習を行うのが良いのではないでしょうか。また実験の中身ですが,模倣する際も意味を考えて模倣することが大切であることが音読では言われます(e.g., 鈴木・門田, 2012*2 )。その指示というものがどこまでなされていたのかはこの論文では読み取れませんでした。

 最後に本論文では,Don't just repeat after meという刺激的なタイトルになっていますが,模倣,すなわち声に出すことの効果も先行研究(e.g., Ellis & Beaton, 1993; Seiber, 1927)として紹介されています。また,議論において模倣行為が無駄(futile)なものではないと評されていますので,念のために記述しておきます。

 

*1:効果量は理解においては実験1では小,実験2で中。産出ではそれぞれ中と大の効果量という結果が出ています。

*2:鈴木寿一・門田修平 (2012) 『英語音読指導ハンドブック』東京: 大修館書店