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不断の努力と普段の努力

英語,研究,教育実践,読書記録,ヴィオラのこと。ヴィオラのような人を目指しています。

(レビュー)「最後の英単語学習!マジタン」

英語

「最後の英単語学習!マジタン」というアプリを使ってみまして気づいた点をご紹介したいと思います。2014/10/13現在で有料アプリ第5位です。

マジタンとは

"やって語彙を増やすか、やらずに悩みを増やすか"
◎スクリーニングと記憶度管理で効率的に学習!
◎全レベル網羅で自分の語彙数を正確にカウント!
◎5日で今まで覚えた英単語を全て思い出せます!

「何冊も買ったのにちゃんと勉強しなかった、ドンドン語彙数を増やせる英単語教材が欲しい」
TOEIC200点台から955点に上げた弊社代表が発案、
①知っている単語は排除(スクリーニング機能)、
②自分の語彙数を正確に把握(語彙数カウント)、
③効率的反復(記憶度変化、時間制限予習&4択)、
を備えたドンドン語彙数を増やせるアプリです。

App Store 紹介ページより引用

私も,こちらの記事を見て試してみました。


1万3千の英単語から自分だけの単語帳を作れる『最後の英単語学習!マジタン』 | English Hacker

紹介はそちらを参照のこと。

 

実際にやってみた

 結論を書きましょう。

これ,続けられるのか...。

 確かに,マジタンは今までありそうでなかった観点(記憶)を盛り込んでいます。一定期間が経ったら学習を促すようにできており,学び忘れを防ぐ良いシステムだと思います。また既有知識に合わせて学習すべき語を選定してくれます。例えば5000語,語の知識を持っていたら2000語レベルの知識なんて学ぶだけ時間の無駄なので学習リストから省いてくれるわけです。これは素晴らしいことです。

しかし,2点ほど問題点が二つあると思いました。

 一つ目は単調にならないかということ,二つ目はそんなに語彙数が必要なのかということです。その最たる要因としては,一つ目に関しては,英語とそれに対応する日本語訳が書かれているからだと考えられます。二つ目についても後述します。

 

 ということでこんな使い方も必要ということも提案しつつ,書き進めます。

文脈も欲しい(単調ではならないかという問題)

 マジタンは,単語と意味の一対一で覚える形式で進んでいきます。実際のところ訳語で覚えることは文脈で覚えることよりも,能率的であると言われています。特に,学習初期の学習者は持っている語彙が少ないこともあり,訳語だけで学習した方が良いとされています*1。目安としては3,000語です*2。この95%というのは,文の内容を理解できる最低ラインで,3,000語,理解できれば「話し言葉」の95%はカバーできます*3。また,英英辞典で用いられている辞書,例えばオックスフォードの英英辞典

オックスフォード現代英英辞典 第8版 DVD-ROM付

オックスフォード現代英英辞典 第8版 DVD-ROM付

 

 は3000語程度の基本語彙で押さえられているので,この程度の語彙サイズがあれば英英で辞書が読めるレベルです。意外と敷居は高くないのです。

 話が脱線しましたが,語と訳の一対一対応ですと覚えたとしてもすぐに忘れてしまうということはないでしょうか。またこの方法は欠点があるという主張もあります。それは英語と訳語の一対一対応で覚えてしまうと,その学習した意味でしか取り出せなくなる危険性があり,実際のその語の使い方を理解しづらいという難点があります*4。例えばpresentという単語を使いたい時に,the present problemですと「現在の問題」ですが,He is present.ですと「彼は出席している」というように意味が全然違います*5。一対一対応でそれが理解できるでしょうか。ですので,文やフレーズで理解することも必要で,文によって語の使い方を見ることも大切であることは自明でしょう*6

 以上,本気で学習する際に,3,000語あるならば語と訳の一対一対応だけでなく,辞書を引く,文に触れる必要もあるでしょう。もちろん,とっかかりとしては一対一対応でも良いとは思いますし,文で学ぶか語と意味で見るか,どちらが良いということではなく,両方バランスよく学習することが大切でしょう。

13,000語も要らない(そんなに語彙数が必要なのかという問題)

 英単語マニアになりたい人を除いては,13,000語もこのマジタンの形式で学習する必要はないでしょう。先ほど理解の最低ラインである95%という数字を出しましたが,8,000-9,000語あれば98%の語彙をカバーすることができます*7。これだけあればたとえ,文中に意味の分からない語が出てきても推測で分かるレベルですし,楽しんで書物を読むことができます。ですので英語学習に終わりはありませんが,その8,000-9,000語を理解できるレベルにあるなら,語と意味の一対一対応から卒業して,内容のある書物を読む方にシフトし,読解速度を上げるなどスキルの面を磨くことの方が大事になってくると思われます

実際にどれだけ語を知っているかを調べるには?

 マジタンにもどれだけ語を知っているかを調べることもできるのですが,語の広さを計測するサイトとしては以下がおすすめです。


Test Your Vocabulary Online With VocabularySize.com – Free tools to measure your students' vocabulary size

理由としては,このサイトは語彙習得研究に基づいて語を選定していることがあることや日本語での指示があるので,すべて英語で指示がされているサイトよりもとっつきやすいからです。もしよろしければお試しください。

まとめ

 結論としては,3,000語程度学習したら,文脈の中やフレーズの中で覚えるほうが,効率的に良いです。そして8,000語程度学習できたら,あとはリーディングやリスニングの中,つまり文脈の中で内容のあるものを自発的に学習するほうが良いですし,読むのも楽しいとのではないでしょうか。

 ただし,データベースとしてこのマジタンは優れています。索引として利用し,自分で文を作るなどして学習するとそれはそれでよいのではと思います。

*1:例えば Prince, P. (1996). Second language vocabulary learning: The role of context versus translations as a function of proficiency. The Modern Language Journal, 80, 478-493. doi:10.1111/j.1540-4781.1996.tb05468.x

*2:Schmitt, N., & Schmitt, D. (2014). A reassessment of frequency and vocabulary size in L2 vocabulary teaching. Language Teaching, 47, 484-503. doi:10.1017/S0261444812000018

*3:Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening? Canadian Modern Language Review, 63, 59-82. doi:10.3138/cmlr.63.1.59

*4:Jiang, N. (2000). Lexical development and representation in a second language. Applied Linguistics, 21, 47-77. doi:10.1093/applin/21.1.47 

*5:限定用法と叙述用法の使い方の違いですね。

*6:ibid

*7:Nation (2006)