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不断の努力と普段の努力

英語,研究,教育実践,読書記録,ヴィオラのこと。ヴィオラのような人を目指しています。

(論文レビュー) 英語語彙を協同で学習することの役割 (Nassaji & Tian, 2014)

研究

Nassaji, H., & Tian, J. (2014). The role of language coproduction in learning English vocabulary. Procedia - Social and Behavioral Sciences, 143, 794-798. doi:10.1016/j.sbspro.2014.07.478

のまとめです。

概要

この論文では,平たく言えば①アウトプットによるタスクがインプットによるタスクよりも有効的で,②そのアウトプットタスクは個人で行うよりも協同で行った方が良いのではないかと主張されています。

 

さて,この論文は学会の予稿集のようですので,結果が手順など端折られている部分があるように見受けられました。そこで,関連した研究を以前のブログに書いていましたので,併せて紹介したいと思います。*1

Nassaji, H., & Tian, J. (2010). Collaborative and individual output tasks and their effects on learning English phrasal verbs. Language Teaching Research, 14, 397-419. doi:10.1177/1362168810375364

 この論文では,L2における協同で行うアウトプットタスク(dictoglossやwritingタスクなど)の先行研究がなされていますが,協同学習で行えば個々で行うよりも良いというわけではないということが述べられています。その中でNassaji and Tianは個人か協同か,という問題だけでなく先行研究の問題としてタスクの種類に関する効果が検証されていないことを挙げています。

 その中で彼らはreconstruction clozeとreconstruction editingというタスクを用いて検証を行いました。


reconstruction clozeというのは穴が空いた文を埋めるもので,

Daughter: Hi, Mom. How are you?
Mom: Great.                     ? (p.418)

という形式になります。
一方,reconstruction editing: 文中の誤りを訂正するもので,

Cathy: Hi, Melissa, Long time no see.
Melissa: Wow, I haven't seen you for like three year. (p.418)

この場合だと,yearが誤りで,yearsになるよね,ということを指摘するタスクです。また,reconstructionというのは,教授者が読み上げたもの再生するという意味で,話を聞きそれをメモした上で,原文に近いものを再生をするように指示がなされました。


さて,この研究における研究課題は以下の4つでした。

  1. 句動詞を学習する上でのアウトプットタスクの(タスクによる)効果はいかなるものか。
  2. アウトプットタスクを協同で行うことが個人で行うよりもタスク完遂に影響を与えるのか。
  3. アウトプットタスクを協同で行うことが個人で行うよりも語彙知識の獲得を導くのか。
  4. 二つのタスクの効果における違いはあるのか。

 実験の参加者はカナダのESLプログラムに参加している,学習者26人で,プログラムによるplacementテストにおいて同程度とされる2クラスで実験は行われました。また素材は,16個の英語の句動詞で2語か3語で構成されるものでした。

 実験の手順はpretest(事前テスト)→treatment→posttest(直後テスト)の流れで行われました。実験は2サイクル行われ,カウンターバランスを取るために,一例を挙げるとcloze(個人)→editing(個人)を1サイクル目,editing(協同)→cloze(協同)を2サイクル目というようにし,最終的にすべての参加者が2つの学習スタイル・タスクを経験できるように設計されています。1回のタスクに素材は4個用いられましたが,clozeでは,12個ブランクが開けられ,editingでは10個のエラ―が設けられています。つまり,実験には関係ないフィラーが用意されていたわけです。
 事前テストと直後テストの測定については,Wesche and Paribakht (1996)の語彙知識尺度テストが用いられました。これは,語彙知識の深さを測るもので,これによって受容語彙(英語から日本語にできる知識)から発表語彙(日本語から英語にできる知識)までの親密さを測ることができます(①見たことがない,②見たことはあるけど意味が分からない,③見たことがあり同義語や訳が分かる,④知っていて同義語や訳が分かる,⑤文の中でその語を使えるという5段階で測定)。
 データは量的質的に分析され,質的なものに関しては,発話が録音されタスクにおいてどのような発話をしてタスクに取り組んでいたかが分析されました。
 結果事前テストから直後テストで得られた知識の「差」を分析したところ,こちらもeditingの方がclozeよりも有意に得点が高い(p < .05)ことが分かったものの,形態(個人と協同)を見た所,両者に有意差は見られないことが判明しました。

 さらに,質的分析においては形式に焦点を当てた発話を中心に分析がなされ,その結果editingの方がclozeよりも形式に関するインタラクションをしていることが分かりました。結局editingは語が提示されており,学習者もその言語形式に気づくことが出来るので,それに関する発話を促すのではないかと考察されていました。

 まとめると,タスク自体はeditingの方が良さそうだけども,個人と協同とを比較すると差はありません。しかしeditingは発話が促されるし,学習が活発になる,ということになります

さて,本題へ。この研究ではインプット(目標語彙を見て,それに合う意味を選ぶマッチングタスク)のみの群があります。それとインプット+アウトプット(上記のタスク)を行った2群(個人で行う群・協同で行う群)を3群で分析を行っています。被験者は初級から中級の学習者たち(ESL環境),使用した語彙は,16個の句動詞で,2週間にわたって行われました。

結果は,インプットだけよりもインプット+アウトプットの方が良いという結果になりました。*2

また事前テストから直後テストで得られた知識の「差」を分析したところ,Nassaji and Tian (2010)とは異なり,協同で行った方が学習の効果が見られるということが分かりました。

よって,協同で行うことがよりよい学習につながるということを主張しています

感想

 協同で学習することが良いということを示した本論文ですが,これは熟達度によってもタスクの効果が影響されるし,情意的な要素もあって,日本人の場合どうなのでしょうか。また協同で行うということで,Nassaji  and Tian (2010)では発話が多くなるということにつながると主張していますが,実際にそのことによって学習自体にモチベーションなどに影響があるのか,副産物としての諸効果,そういったところも気になるところです。

*1:大幅に修正をしています。

*2:ただし,アウトプット群はインプット群よりも学習している時間が長いということを著者は断っています。