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不断の努力と普段の努力

英語,研究,教育実践,読書記録,ヴィオラのこと。ヴィオラのような人を目指しています。

(読書記録) はじめての英語教育研究 押さえておきたいコツとポイント

 

はじめての英語教育研究 −− 押さえておきたいコツとポイント

はじめての英語教育研究 −− 押さえておきたいコツとポイント

  • 作者: 浦野研,亘理陽一,田中武夫,藤田卓郎,?木亜希子,酒井英樹
  • 出版社/メーカー: 研究社
  • 発売日: 2016/07/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者の先生方からご恵贈いただきました。まずは御礼申し上げます。

 

 さて,感想なのですが,一言で申しますと,

学生の時にこんな本があれば!その一言に尽きます(お世辞ではありません)。文面から察するに,(小・中・高)英語教員に向けて優しく語りかけてくれている本なのかなと思いましたが,早くから学生さんも持っておくに越したことはないです。

 

 本書が優れているのがタイトルだなと思います。この本にもタイトルのつけ方は大切だよ(p. 200あたり)と書かれていますが,2つポイントがあると感じました。

  1. 「はじめての」
  2. 「英語教育研究」

というところです。

「はじめての」

 表紙には遠慮がちに書かれていますが,この語の選択が本書の秀逸さを際立たせるものとなっています。本書はなぜ研究をすることに意味や価値があるのか,どのような研究手法があるのか,どういうプロセスを踏めば良いかというところから始まっています。研究って難しいものだと思われがちだなと現場にいてつくづく感じるのですが,この本はそこまで下りてくるかと唸るくらい大変わかりやすい例を交えながら書かれています[いると確信しています]。しかも綿密で説得力があります。

 ところで現場には,ドヤ顔で「俺が考えた最強の指導法」なるものを披露される方が一定おられますと感じます(そう数は多くないですが)。本書はそれでは単なる自己満足なんだよということを冷静に説いています。

先行研究との関係をきちんと説明することは,その研究の価値を高めることにもつながります。Uメソッドに関する論文が発表されたとしましょう。それがどれだけ優れた指導法だとしても,Uメソッドを知らない人がその名前だけでこの論文を手に取り実際に読もうと思うことはあまり期待できません。しかし,Uメソッドが,例えば「リーディング指導法のうち,田中・島田・紺渡 (2011)に基づく,内容理解をより深いレベルで行うための効果的な発問の方法」であると定義されていれば,リーディング研究者はもちろん,多くの英語教師にとってもその研究の内容がわかりやすくなるので,興味を持つ人も増えるでしょう。(p. 7) *1

「英語教育研究」

 外国語教育ではなく,英語教育という良い意味で狭い枠組みに基づいて書かれているので,現場で英語を教えておられる先生の目線に立っているということがよく伝わってきました。英語教育研究に特化しているということですが,その例も勉強になるところがあって,研究手法や問いの立て方の具体例として実際の論文の解説などが書かれていたりします。実際読んでみると,こんな研究あるんだといった学びがいくつかありました。例えば...

伊達 (2015) は,タスクを繰り返す練習を行うことで,学習者の発話の流暢さと正確さが向上するかどうかを調査した。日本人大学生45名を対象とし,学習者を3グループに分類した。グループ1の学習者は,同じ内容の物語描写タスクを2回遂行する練習を,週1回4週間行った。グループ2の学習者は,異なる内容の物語描写タスクを2回遂行する練習を,週1回4週間行った。グループ3の学習者はタスクの練習は行わず,プレテストとポストテストのみを受けた。その結果,タスクの違いによって練習の効果に差が見られた。同じタスクを遂行したグループは4週間後に流暢さと正確さの両方が向上したが,異なるタスクを行ったグループは流暢さの向上は見られず,正確さのみが向上した。(p. 140)*2

 また,書き方に関してもこういう風に先行研究をレビューしていけばいいんだなということで勉強になります。 

 

 もちろん「はじめての」でない人にとっても,研究に対する考え方を整理することができると感じました。特に私は研究に関する本を恥ずかしながらあまり読んでおらず,論文や他の方の学会発表を見て経験的に朧げながら学んできましたが,その経験的に学んできたことが文字化されていて「あっ,なるほどな」と思う部分が随所にありました。先行研究から研究テーマを考えるという項目がその例です。

研究テーマに基づいて行う先行研究の検討は通常,次のプロセスをたどります。

 (1) 選定したテーマが,英語教育研究ではどのような切り口で扱われているのかを把握する

 (2) これまでの研究で何が調査されてきたか,これまでに何が判明しているのか,また何がわかっていないのかを検討する

 (3) これまでの研究の問題点 (理論的欠如,方法論的問題等)を検討する

(p. 25)

一つのマニュアルとしてこれからしばらくお世話になることでしょう。

 

 ということで,いくつか例を列挙しながらご紹介しましたが,他にも質的・量的研究のこと,先行研究・課題の探し方,結果の公表の仕方など,丁寧に丁寧に書かれています。現場の人間にとっては,多忙さという問題は依然として残されているわけですが,それ以外に研究を始めるにあたって考えられる問題は,この本によって解決されたのではないでしょうか。

*1:

 

推論発問を取り入れた英語リーディング指導―深い読みを促す英語授業

推論発問を取り入れた英語リーディング指導―深い読みを促す英語授業

 

 

*2:伊達正起 (2015). 「タスクを繰り返すことで言語形式に関する知識の手続き化は起こるのか?」『中部地区英語教育学会紀要』第44号, 1-8.